保険〜終身保険〜

保険をもう少し細かく話していきます。


生命保険は、大きく「終身保険(一生涯保障する保険)」と「定期保険(一定期間保障する保険)」の2つに区分されます。
一般的には、死亡・高度障害保障が一生涯続く保険を「終身保険」と呼んでいますが、医療保険がん保険、資産の運用実績に応じて保険金や解約返戻金が変動する変額保険などでも、保障が一生涯続くものは終身保険に区分できます。
一方、保障が一定期間に限定されている保険は「定期保険」に区分され、こちらも死亡・高度障害保険、医療保険がん保険など、備えておきたい分野別の保険商品があります。
通常、死亡・高度障害保障の定期保険(定期死亡保険)は、契約当初に設定した期間が到来すると、保険金が支払われることなく契約が終了するため、「掛け捨て型の保険」といわれますが、一定期間のみ死亡・高度障害保障をしつつ積み立てができる「養老保険」という保険商品も存在します。養老保険は死亡した時または高度障害状態になった時だけでなく、無事に所定の期間が満了した時にも保険金が受け取れるので、その分、定期死亡保険に比べて保険料は一般的に高くなります。
同じ死亡・高度障害保障の保険でも、保険期間や保険金の支払われ方など違いがありますので、生命保険をご検討される際は、保険に対しどのようなニーズがあるのか、必要な保障(保険期間や保険金額)はどのくらいかを考えることが大切です。

「掛け捨て型」と「貯蓄型」保険の違い

さまざまな特徴のある保険商品がありますが、生命保険は大きく2つのタイプに分けられます。「掛け捨て型」である「定期保険」と、「貯蓄型」である「終身保険」です。

なるべく保険料は節約したい、一定の期間だけ死亡保障があればいい方などは掛け捨て型を検討してみてはいかがでしょうか。
また保険の見直しがしやすいのもメリットの一つですが、支払った保険料は戻ってこず、更新のたびに保険料が上がるのがデメリットとなります。
死亡保障を確保しながら、同時に子どもの学費や老後資金を準備したい方は貯蓄型の保険はいかがでしょうか。
保険料払込期間満了後に解約することで解約返戻金をそれらに充てることができます。ただ早期に解約すると解約返戻金が支払った保険料を下回ります。そのため長期的に高額な保険料を支払うことが難しい方には向いていないでしょう。

☆メリット

・一生涯の保障で安心が得られること
メリットとして一般的によく挙げられます。
確かに、一生涯にわたって遺族のための経済的な備えが得られることはメリットといえるでしょう。
とはいえ、定期保険のなかにも、保障期間が100歳までの長期保障の商品もありますので、必ずしも終身保険でなくてもよいのではと考えることもできます。
しかし、90歳の女性の平均余命が6年弱、男性では4年強(厚生労働省「令和元年簡易生命表の概況」より)であることを考えますと、やはり一生涯の保障である終身保険には安心感があるのではないでしょうか。
つまり、「長生きリスク」を考えなくてよいことが終身保険のメリットといえます。
万一、家族の長生きを素直に喜べなくなるようなことになったら悲劇です。終身保険なら、そのような事態を避けることができます。
また、保障が一生涯であることで、「相続対策」や「葬儀費用」などの目的にも安心して利用することができます。


・貯蓄性があること
これも終身保険のメリットとしてよく挙げられます。
確かに終身保険は、被保険者が死亡もしくは高度障害状態になったときに死亡保険金が支払われるだけではなく、保険料の払い込みが終了した後、一定期間が経過した後に解約すると多くの場合、払込保険料の累計額を上回る解約返戻金を受け取れます。そのため、この仕組みを利用して貯蓄として活用されることがあります。
よく例に挙げられるのが、お子さまの教育費準備のために終身保険を活用する方法です。
あらかじめお子さまの大学などへの進学時に解約することを想定して終身保険に加入します。
同様の目的で学資保険を利用されることも多いと思われますが、終身保険には満期がありませんので、もし教育費が貯蓄などで賄えた場合は解約せず、そのまま保有し続けることもできます。
保有し続けた終身保険は「老後の生活費」「相続対策」「葬儀費用」など、さまざまな用途に利用することができます。このように融通のきくところも終身保険のメリットの一つといえるでしょう。


☆デメリット

・デメリットとしてよく挙げられます。
インフレによるデメリットは終身保険だけではなく、保険金額が確定している保険商品全般にあてはまることですが、保障期間が一生涯の終身保険は、インフレの影響を比較的受けやすくなります。
日本銀行は2013年1月に、消費者物価の前年比上昇率の目標を2%に設定しました。
この目標が実現して今後はインフレが続くと仮定すると、一般的な終身保険(定額終身保険)ではインフレに対する対応が難しい場合があります(「終身保険の種類」のなかにはインフレに対応している商品もあります)。
先ほど例に挙げた教育費もインフレの影響を受けると考えられますので、加入時に見込んでいた解約返戻金では、必要な教育費が不足する可能性があります。終身保険のデメリットとして、しばしば取り上げられるのはこのようなケースです。一方、このことを裏返せばデフレには強いということです。
デフレが続いて低金利が継続したり、あるいはさらに下がったりした場合は、終身保険に加入した当時の返戻率が他の金融商品と比較して相対的に高くなり、結果的に終身保険が有利な貯蓄方法になる可能性があります。
インフレリスクがあることは、デフレに強いということと表裏一体の関係でもあるので、多面的に見て検討した方がよいでしょう。

・定期保険と比較して保険料が高い
こちらもしばしば終身保険のデメリットとして取り上げられます。
確かに同額の死亡保障で比較した場合、終身保険の保険料は定期保険の保険料より一般的に高くなります。
一生涯保障を受けられる終身保険は、いつかは必ず保険金が支払われるからです。
そのため終身保険だけで十分な死亡保障を得ようとした場合、家計への負担は大きくなりますので、今後教育費などの増加が見込まれる家庭では、大きな死亡保障には終身保険だけではなく、定期保険なども活用することを考えるのがよいでしょう。
早期解約(保険料払込完了前の解約)は元本割れする
こちらも終身保険のデメリットとしてよく取り上げられます。
確かに、終身保険は多くの場合、保険料の払い込みが完了する前に解約すると、解約返戻金は払込保険料の累計額を下回ります。このことは注意すべき点ではありますが、そもそも解約しなければ問題は生じないともいえます。
終身保険は遺族のための経済的な備えをそもそもの目的としているので、解約を前提とした利用方法のみで、「終身保険にはデメリットがある」と評価するのは疑問が残ります。
もっとも、終身保険は長期間にわたって保険料を支払いますので、保険料払込期間中に、家計の状況が加入当初と大きく変化する可能性があります。そのため保険料の払い込みを無理なく完了できるように、加入時にしっかりと検討する必要があります。